2012年7月24日火曜日

父親たちの星条旗(Flags of Our Fathers)



 

監督・音楽: クリント・イーストウッド
製作: クリント・イーストウッド、スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・ロレンツ
撮影: トム・スターン
編集: ジョエル・コックス
脚本: ポール・ハギス、ウィリアム・ブロイレス・Jr
2006年 アメリカ


硫黄島で戦ったドクことジョン・ブラッドリーさん(当時、二等薬剤軍曹)の
息子ジェイムズ・ブラッドリー(日本に留学していたこともある)と
ロン・パワーズの硫黄島の星条旗(原題 Flags of Our Fathers)が原作、
というかノンフィクション。


生前、ブラッドリーさんは息子さんのジェイムズさんや家族に
硫黄島のことを話さなかったそうで、
息子さんは4年かけて星条旗の掲揚に立ち会った生存者に話を聞いて、
それを基に出版したのだとか。

味方を美化せず、丁寧に撮られたという印象で好感が持てました。

映画で呆然とする事って実はあまりないのだけど、
久しぶりにショックというよりも、ぬめりのある、ぼうっとした気分になっている。


硫黄島は東京都だから場所は違うし、
私の亡くなったお祖父さんは海軍の主計科の秘書だったので
��当時どんな言い方だったか分からん)実際に戦ったことはないらしいが、
戦地である東南アジアへ赴いていたので、他人事に思えなかった。(日本人ならそうよね)
��お祖父さんが「川内」に乗ったのは多分、訓練のためでしょう。
お祖母さんは「本土にいる私の方が、よっぽど危なか思いをしとるったい」と言っていました)


船の中では東京ローズの「ゼロアワー」が流れる。
戦闘シーンには音楽はなく、銃撃や爆発、戦闘機や軍用車が通り過ぎる音だけ。
吹き飛んだ遺体の部分おもちゃのように散乱している。
気が動転して必要以上に敵を刺し殺す仲間、味方の弾に当たって亡くなってしまう戦友。
拷問の末、殺された戦友の変わり果てた姿。

アメリカ海軍衛生兵だったブラッドリーさんはレイニー・ギャグノンさん、
アイラ・ヘイズさんとともに"二度目の星条旗"を掲げた写真で注目された。

政府は戦争を続けるためのお金が必要なので、
富裕層に国債を買ってもらうために彼らを英雄に祭り上げて、アメリカ中を巡業させる。

昔、メンフィス・ベルという綺麗すぎる戦争映画でも、
「ベル号の乗組員たちは、任務完了後にはアメリカ巡業が待っている」
みたいな事を記者に語らせていた。

英雄は必要になってから作られるものだ、という言葉がまさしくそう。
ドイツで言うと「ドイツ週間ニュース」や「デア・アードラー」「ダイ・ヴェアマハト」「シグナル」
などといった報道媒体がハリウッド映画や「ライフ」のそれにあたる。

写真に関する「嘘」を隠して各地を回る3人の兵士。
本人たちは英雄なんて呼ばれたくない。

戦争が終わると、英雄は必要なくなるので忘れ去られる。
ギャグノンさんは就職の面接を受けるにもなかなか上手くいかない。
ブラッドリーさんは数十年経っても戦友の無残な最期にうなされる。


ネイティブアメリカンのアイラさんは、戦中戦後も様々な人種差別を受けた。
闘いの後遺症でうつ状態になり、
「写真に写っていたのは、本当はあなたの息子さんです」と告げに、
はるか遠い戦友ハーロンさんの故郷テキサスへ行き、
��ハーロンさんのご両親がどういう心境だったかは計り知れない。)
そして、一人寂しく亡くなった。死後、数日経った状態だったという。

映画に出てきた言葉「戦場を知らないものほど、戦争を語る」
お祖父さんたちが戦時中の話を語りたがらない気持ちが分かった気がした。
平べったい表現で申し訳ないけれど、本当、戦争に英雄はいないのである。

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