2012年7月24日火曜日

海の沈黙 Le Silence de la mer (1947)

 

原作: ヴェルコール
監督・脚本・編集・製作: ジャン=ピエール・メルヴィル
撮影監督・編集: アンリ・ドカ
音楽: エドガー・ビショフ
��モノクロ)

ヴェルナー・フォン・イーブルナック(将校): ハワード・ヴェルノン
私(語り手): ジャン=マリ・ロバン
姪: ニコル・ステファーヌ

 

もう既に秀逸な感想文があったのであえて書かないつもりだったけど、
容易い反戦映画ではない事を感じ取ってもらえたらと私なりの言葉で書きたくなったもので。
ちなみに公開日は今日まで。DVD化もVHS化もされておらず、今のところ観られるのは劇場のみ。

英語版のDVDは出ているらしいのですが、こんなに良い映画ですので、
生産数を限定してでもいいから是非出して欲しいと思っているところ。


海の沈黙はドイツ占領下のフランスで1942年に深夜出版という地下出版にて
世に出たレジスタンス発の短編小説。
作者はたとえ知人にでも自分の正体を明かす事はできなかった為、
ヴェルコールというペンネームを用いました。


ヴェルコールは最初、ドイツ人将校役にルイ・ジューヴェをイメージとしていたという事もあり、
全くの素人映画監督であったメルヴィル(当時30歳)が
自分の作品を映画化する事に反対しました。

ですので、キャストも自分の身内や知りあいを使い、自主映画という形で撮られます。
メルヴィルは監督をはじめ、脚本や編集まで一人でこなし、わずかな予算で制作するはめに。

しかし、この手作りの映画はやがてフランスに新しい風『ヌーヴェル・ヴァーグ』を呼び込むのです。
そして、海の沈黙を見たジャン・コクトーは『恐るべき子供たち』の映画化をメルヴィルに託しました。


アメリカの描くヨーロッパ戦線は、その殆どが当然ながら部外者の目線でしかない。
��だから悪いという事ではない、こうなってしまうのは仕方のないことです。)
彼等よりもつらい日々を過ごしたドイツのあるいは隣国出身の監督らが描く
戦時中の物語はとても身近です。
ですから、同じ英語圏でもイギリス映画には好感が持てる。

当然ながら、ドイツは全員ナチだ!という馬鹿げた完全掌握の物語にはなりません。
ナチズムという集団催眠に掛かった人々の恐ろしい面々を描く一方、
個々の善き側面を認めることも忘れない。


海の沈黙は戦争映画というには違う、『抵抗』とは上手く言ったものです。
沈黙の抵抗を続ける事に罪悪感を覚えながらも沈黙は続く。
彼がどんなに礼儀正しくても占領者である事には変わりないからだ。

紳士的で温和なドイツ人将校は親の影響でずっとフランスにあこがれてきたと
沈黙を守る2人に対し、返事を期待せずにただ話し続ける。
本当は作曲家だから軍服は着たくないといって下宿先の家族の前では私服を着る。
��占領下では将校に部屋を提供させらた民間人の方が居ました)
淡々と話は進む、クライマックスのストンと心に落ちる箇所でさえ淡々としている。


私は将校役をハワード・ヴェルノン(Howard Vernon)にして正解だったと思う。
顔は怪奇モノっぽいのにどこか滑稽で、二人に遠慮しながらも
「『美女と野獣』は何回も読みました。心にぐっと来るのです。」とか
「フランスとドイツの結婚、一番美しい結婚!ドイツはフランスに癒されて優しくなれます。」
とか言いながら両手を頬に当て、目を輝かせる。

暖炉に温まりながら夢見がちに話す姿、あこがれだったパリを一人無表情で観光する姿が
本当に純粋で可愛い。姪は彼がフィアンセだった女性の話をした時は
占領者である彼に頑なに沈黙を守りながらもやきもちを焼く。


だが、彼のそんな憧れも強い圧力の前ではどうすることもできなかった。
私(語り手)が彼に送った最後の言葉が胸を打ちます。

そしてまた、私と姪の暮らしが再開する。
淡々として、静かな生活の中にやんわりと低い影を落として。

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